独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2005年2月3日


無脊椎動物における発生メカニズムの多様性をテーマにCDBミーティングを開催
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CDBは、「Diversity of Developmental Mechanisms in Invertebrates」と題して第12回CDBミーティングを2月2日から2日間にわたって開催した。CDBの研究者に加え、外部からも著名な研究者を多数迎え、無脊椎動物のパターン形成と発生メカニズムの多様性について活発な議論が交わされた。形態形成シグナル研究グループ(林茂生グループディレクター)の井上淑子研究員は以下のようなコメントを寄せ、この分野の進展に即したタイムリーで刺激的なミーティングだったと語っている。

第12回CDBミーティングの参加者


「The 12th CDB Meeting: Diversity of Developmental Mechanisms in Invertebrates」は、この冬一番の寒波が到来した2/2-3の2日間に開催された。比較的温暖な気候の神戸でも最低気温が零下にまで下がったmeeting初日、交通機関の乱れが心配されたがCDBオーディトリウムにmeeting参加者がぞくぞくと集合した。初日は節足動物の形態形成を扱う「今ホットな」研究者が国内中心に登場し、会場は外の寒さを吹き飛ばす熱気に満ちた。2日目は前日最後のDr. Kaufmanの講演に引き続き、体節形成をテーマに議論が交わされた。体節形成に関するこれだけの「多様性」が一同に会したのは国内初だったのではないだろうか。無脊椎動物の体節形成に関してはこれまでショウジョウバエでの知見が先行して蓄積しているが、他の無脊椎動物におけるギャップ・ペアルール・セグメントポラリティ等の体節形成遺伝子の発現パターン及び機能はショウジョウバエのそれと同一ではない。特にペアルール遺伝子の一つである転写因子even-skippedの発現パターンは昆虫間だけでも非常に多様であることが強調して述べられた。それはタンパクの機能レベルでの変化を意味しているのだろうか? また脊椎動物の体節形成とspider, centipede, leechあるいはshort-germ型の昆虫のterminal additionによる体節形成との間に類似点を見いだせるか、という点にも議論が集中した。これらの問いに対する結論を出せる段階にはまだないだろうが、こうした集約された議論が複数の研究者間でface-to-faceで行われる中で何らかの統一的見解が生まれてくるように思う。90年代の終わりから非モデル生物における遺伝子機能ノックアウト法として注目されてきたRNAi法、特にparental RNAiが現在一部の生物では強力なツールとして威力を発揮し始めており、以前より深い議論が可能になっている背景もあって、今後急速にこの分野が進展することを予感させた。CDB meeting開催の1つのメリットはこうした研究分野の進展にいち早く対応してタイムリーな議論の場を提供できることであろう。実際今回のmeetingは企画からわずか4ヶ月で開催が実現した。

今回のmeetingの意義はそれだけではないと感じた。今回は理研内外から多くの参加者が集まり、学生の姿も目立った。meetingに刺激を受けこの分野へ参入したいと考える若手が増えれば、研究の裾野が広がることも期待できるだろう。海外で開かれるmeetingには出席出来る研究者の数も限られるが、国内であれば若い世代の参加も比較的容易である。理研CDBが多様な参加者に対し幅広く門戸を開けて国際的な研究交流につながるmeetingを催すことができたことは非常に意義深かったと思う。理研がバックアップした形でのevo-devo meetingが再び神戸で開かれ、この分野の発展に寄与することを願っている。


http://www.cdb.riken.jp/invertebrate05/

[ お問合せ:独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター 広報国際化室 ]


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