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理研CDBの髙橋政代プロジェクトリーダー(網膜再生医療研究開発プロジェクト)は、神戸市立医療センター中央市民病院の栗本康夫眼科部長、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授と共に記者会見を開き、他家iPS細胞を用いた臨床研究を開始することを発表した。本臨床研究は、中央市民病院・大阪大学・国立大学法人京都大学iPS細胞研究所(CiRA)・理化学研究所の4機関が連携して行われる。京都大学CiRAが作製した再生医療用iPS細胞ストックをもとに、理研が移植用の網膜色素上皮細胞を製造し、中央市民病院および大阪大学が患者への移植を行う計画だ。昨年6月に実施計画を公表してから、各実施機関の倫理委員会および厚生労働省の審議会(再生医療等評価部会)での審査を経て、今年2月2日付で正式に実施が了承された。これを受けて、6日より被験者の募集を開始した。
本臨床研究は「滲出型加齢黄斑変性」を対象とする。他人由来(他家)のiPS細胞から作製した色素上皮細胞をバラバラの状態(細胞懸濁液)で移植する方法について検討する計画で、2年間で5名程度に移植する予定だ。今回検討する他家移植は、自家移植で課題だった「費用と細胞製造にかかる時間」を大幅に短縮できると期待される。
臨床研究開始を受けて、「(栗本眼科部長)臨床チームで研究を滞らせてしまうことがないよう、身が引き締まる思いだ。」「(髙橋プロジェクトリーダー)本臨床研究の主目的は『安全性の確認』だが、今回は同時に『有効性』についても評価し、今後治療として社会に広めていく可能性を探りたいと考えている。今回は自家移植に比べてスケジュールが早いため、今から緊張感を高めている。」「(西田教授)大阪大学は今回初めての参加で、重責を感じている。加齢黄斑変性は患者数も多く、治療が難しい患者も多い。新たな治療法の開発で未来を開拓できると期待している。」と、それぞれ思いを語った。また、京都大学CiRAの山中伸弥教授は「CiRAが提供するiPS細胞ストックを使うはじめての例で、期待と同時に身の引き締まる思い。研究の推移を見守り、引き続き4機関で協力していきたい」と文書でコメントを寄せた。