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理研CDBの高橋政代プロジェクトリーダー(網膜再生医療研究開発プロジェクト)らが、公益法人先端医療振興財団、神戸市立医療センター中央市民病院と共同で進めているiPS細胞を用いた臨床研究において、第一症例目の移植から1年が経過した。これを受け、10月2日に3機関が合同でプレス向けの報告会を実施した。この研究は、眼科疾患の一つである滲出型加齢黄斑変性を対象に、患者iPS細胞由来の網膜色素上皮(RPE)シートを移植する新たな治療法の開発を目指すもので、プロトコルの安全性評価を主要な目的としている。第一症例目の移植は2014年9月12日に先端医療センター病院で行なわれた。
左)網膜下に移植された患者iPS細胞由来RPEシート(移植翌日の眼底)。右)1年間の観察期間を終えてプレス向けに報告する栗本眼科統括部長(左)と高橋プロジェクトリーダー(右)。
研究チームは、視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査等を含む診察を、移植後1年間定期的に行なってきた。栗本康夫眼科統括部長(先端医療センター病院)によると、観察期間を通して経過は良好で、移植したRPEシートは当初の位置に留まり、現在も生着しているという。移植したRPEシートによる腫瘍形成など、特段の異常は観察されていない。また、移植後、新生血管病巣の再発を認めず、黄斑部網膜の形態的改善が認められたという。視機能については、手術以前は低下傾向にあった視力が術後は維持に転じ、視覚に関するQOLも改善した。ただし、栗本眼科統括部長は、安全性に関しては経過良好と言えるものの、視機能等の改善は術時の新生血管の抜去によるものである可能性があり、移植したRPEシートの効果は現時点では評価が難しいことを強調した。研究チームは今後さらに3年間の追跡調査を続ける。
高橋政代プロジェクトリーダーは今後の展望について、「多くの患者さんが受けられる治療を少しでも早くつくりたい。引き続き慎重に進める必要があるが、足踏みはできない」とコメントした。また、RPE関連疾患に対して症例に応じた治療を行なうためには、自家iPS細胞と他家iPS細胞の両方を用いること、また、シート状のRPE、浮遊液のRPEの両方が揃う必要があるとの考えを示した。
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