理研CDBの笹井芳樹グループディレクターが、東京テクノ・フォーラム21が授与する「ゴールドメダル賞」を受賞した。平成7年に設立された同賞は、創造的な成果をあげた新進気鋭の科学者に贈られる。笹井グループディレクターの受賞テーマは、「ヒトのES細胞から層構造を持った大脳皮質組織の産生に世界で初めて成功」。
同氏とその研究グループは、アフリカツメガエルなどをモデルにした神経発生の基礎研究を進めるとともに、その知見を活かし、ES細胞からの神経誘導を試みてきた。これまでにマウスやサル、そしてヒトのES細胞から多様な神経細胞を選択的に誘導することに成功している。2005年にはマウスES細胞、2007年にはヒトES細胞から大脳神経細胞を誘導することにも成功していた。
さらに2008年、同研究グループはSFEBq法と呼ばれる新たな培養法を開発し、マウスES細胞から胎児の大脳皮質が持つ4層構造を試験管内で誘導することに成功した(科学ニュース:2008.11.6)。ES細胞から複数種の細胞が立体的かつ機能的に集合した組織を試験管内で誘導することは難しいと考えられていたため、発生学、再生医学の分野に大きなインパクトを与えた。
なお、同賞の授与式は4月17日東京都千代田区の如水会館で、記念講演会は6月2日、同港区の発明会館で行われた。