独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2009年6月5日

CDB研究者二名が文部科学大臣賞を受賞
PDF Download

笹井芳樹グループディレクター(細胞分化・器官発生研究グループヒト幹細胞支援室室長兼務)と斎藤通紀チームリーダー(哺乳類生殖細胞研究チーム、京都大学大学院医学研究科教授兼務)が平成21年度科学技術分野の文部科学大臣賞を受賞した。

笹井芳樹グループディレクターは、多能性細胞から多様な神経細胞への系統的分化誘導に関する研究が評価され、科学技術賞(研究部門)を受賞者した。同氏の研究では、初期胚の脳発生の基礎研究を通して得た知見を応用し、ES細胞、iPS細胞などの多能性幹細胞から、中脳ドーパミン細胞や視床下部神経細胞、さらに大脳皮質層構造の組織産生を始め様々な神経細胞の高効率な分化誘導に成功している。特に中脳ドーパミン細胞は、パーキンソン病サルの脳への移植により治療効果を証明しており、今後再生医療に幅広い範囲で寄与していくことが大いに期待されている。さらに研究グループではヒト多能性細胞大量培養法を世界で始めて確立し、幹細胞培養技術においても幹細胞医学に大きな貢献をした。また笹井グループディレクターは文部科学省「再生医療の実現化プロジェクト」関連事業として、ヒト多能性幹細胞の培養・解析のレクチャーシリーズ、実習講習会も主催しており、CDBにおける研究で得られた知見の広い共有化にも努めている。

斎藤通紀チームリーダーは、生殖細胞形成機構の研究により若手科学者賞を受賞した。斎藤チームリーダーの研究グループは、単一細胞発現遺伝子プロファイリング法を用い、生殖細胞の決定過程に必須の機構を分子レベルで、かつゲノムワイドに解明した。さらに、単一細胞での全遺伝子の発現を、高い定量性と再現性にて検証する技術「単一細胞マイクロアレイ法」を世界に先駆けて開発し、この技術を用いて、生殖細胞の決定過程には高度に統御された遺伝子発現調節が必須であること、さらにその全容を明らかにした。また、生殖細胞形成に関与するシグナル機構を明らかにしており、同氏の一連の研究は、ほとんど未解明であった哺乳類の生殖細胞決定過程の理解を飛躍的に進展させた。

表彰式での笹井グループディレクター(右)と斎藤チームリーダー(左)

笹井グループディレクターは、「今回の受賞につながった研究は、若い研究員や大学院生たちの独創的な発想と 非常に注意深い観察や解析の積み重ねによるものです。彼らの代表として受賞 したと思っています。理研CDBの優れた研究交流を活かし、これからも実験室 での一つ一つの実験のアイデアや結果の議論を大切に、大胆な研究を進めたいと思います。」と語る。一方斎藤チームリーダーも、「コツコツと進めて来た研究ですが、CDBで優秀な研究仲間に恵まれてより発展し、その成果が認められたのは非常にうれしいです。今後もしっかりとした研究を続けていけるよう努力します。」と語り、笹井グループディレクター同様研究室スタッフの努力とその成果を賞賛した。





Copyright (C) CENTER FOR DEVELOPMENTAL BIOLOGY All rights reserved.