2005年CDBシンポジウム‘Origin and Development of the Vertebrate Traits’を開催 |
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今年で3回目となるCDBシンポジウムが、’Origin and Development of the Vertebrate Traits’をテーマに4月11〜13日の3日間に渡って開催された。進化学や発生学の分野から約150人の参加者が集まり、脊椎動物の起源や発生メカニズムについて最新の知見を交えた講演と活発な議論が行われた。11のセッションからなる講演では、脊椎動物の形態から神経形成の分子メカニズムに至る広範な内容で25人の著明な研究者が講演を行った。最初の2日間にはポスターセッションも行われ、多くの若手研究者が議論に夢中になる姿が見られた。参加者の一人でCDBの研究員(形態進化研究チーム)、Rolf Ericssonさんから以下のようなコメントが寄せられた。
2005年CDBシンポジウムは、規模こそ小さいものの、テーマはまさに壮大で、魚類の古生物学からホヤ類を用いたバイオインフォマティクスに至るまで、進化発生学の数々のテーマをカバーするものであった。この分野で著明な研究者が一同に会し、さまざまな視点やバラエティに富んだ生物から得られた知見を知ることができ、大変有意義であった。この種のミーティングではとかく発生生物学的側面のみが重視されがちだが、今回のシンポジウムでは常に進化的背景に議論の焦点があったようだ。様々な分野の研究者が集まったせいか、細かな実験技術よりも進化との関連について質疑が多かったことも私には楽しかった。加えて、普段接することのない古生物学者の研究発表も非常に新鮮なものだった。
このシンポジウムの意義は、自分の研究分野と異なる分野を対象とする人、または異なる生物を使って研究している人と接し、それぞれの研究分野でまさに今何が起きているのかを直接見聞きし、議論できることだった。特に、ホヤの発生研究が急速に進んでいるのには驚いた。Ciona属の2種のホヤでのゲノム解析が終了すれば、転写制御配列の機能も今後明らかになり、それらの情報はさらに他の生物における同様の研究にも非常に有用なものとなろう。
私自身の関心事、脊椎動物の頭部発生についても興味深い講演が多くあった。ウズラ/アヒル間の胚組織移植により、遺伝子発現のタイミングの比較や、それを制御する組織間相互作用を同定した研究は特に印象的なものだ。マウス胚でのDlx及びHoxa2のノックアウト実験も記憶に残っている。とりわけ、両生類胚の細胞を追跡する新たな技術により、舌骨弓レベルの神経堤細胞が上顎形成に関わることを示唆する結果が得られたことも驚きであった。これは一見何でもないことのようにも見えるが、実は全ての脊椎動物に当てはまると考えられてきたパターニングのルールから逸脱したものであり、今後の展開が非常に気になるところである。また、Antivin遺伝子の機能に関する発表に代表されるように、胚の初期パターニングに関する素晴らしい講演も多くあった。
上に挙げたもの以外にもたくさんの興味深い講演やディスカッションに触れ、さらに世界中から集まった友人や以前の同僚と再会でき、非常に有意義なシンポジウムであった。これは私にとって、日本で参加する初めてのシンポジウムでもあり、日本人による高いレベルの研究が多くあることを再認識した。こういった研究が海外の国際シンポジウムの場でも、より頻繁に聞けるようになればと願うばかりだ。終始活発な議論が交わされ、良い雰囲気で進むCDBシンポジウムに春の桜が花を添えていた。
来年のCDBシンポジウムは、’Logic of Development: New Strategies and Concepts’をテーマに、2006年4月10日〜12日に開催される。
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