第2回CDBシンポジウムを開催 |
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理化学研究所・発生・再生科学総合研究センター(CDB)は、発生・再生研究、及び関連する分野の最新の知見を交換し、さらに研究者間の交流を図る目的で2003年から年次シンポジウムを主催している。今回のシンポジウムはテーマをDevelopmental Remodelingとし、3月29日から31日にわたり、生物システムの可塑性を題材に著名な研究者を招いた講演やポスター発表などが行われた。
3日間のプログラムは月曜のモーニングセッションに始まり、En Li氏(Novartis Institute for Biomedical Research、米)がDNAのメチル化機構に関して、若山照彦氏(理研CDB)が核移植クローニングの際に見られる発生異常などについて概説した。また、卵細胞質による体細胞核のリプログラミングに伴った核小体の再編成に関与するタンパク質について、桔梗伸明氏(University of Minnesota、米)が講演を行った。クロマチン動態を取り上げた午後のセッションでは、ヌクレオソームの構築におけるヒストンの多様性について(Steven Henikoff氏、 Fred Hutchinson Cancer Research Center, 米)、分裂酵母のヘテロクロマチン領域のメチル化におけるクロモドメイン蛋白質の機能について(中山潤一氏、理研CDB)、講演と意見交換が行われた。またこのセッションでは植物のエピジェネティクスも取り上げられ、DNAメチル化による内因性トランスポゾンの不活性化メカニズムについても講演が行われた。この日の最後には、Renato Paro氏(ZMBH, University of Heidelberg, 独)がショウジョウバエを用いた研究で、転写抑制のエピジェネティクな維持における遺伝子と非コード領域の相互作用について講演した。この日の夜にはCDBに隣接する先端医療センターでレセプションが行われた。
2日目は組織構築の可塑性をテーマに様々な講演が行われた。Barry Gumbiner氏(University of Virginia、米)の講演では、転写と細胞接着におけるβカテニンのコンフォメーション依存的な機能について新たなモデルが提唱された。この後、上皮−間充織間転移におけるリンカータンパク質の機能について、Richard Fehon氏(Duke University、米)が講演を行った。2つ目のセッションではPaul Martin氏(University of Bristol、英)が、上皮の傷の修復反応における「炎症」遺伝子に関する新たな発見を報告した。第3のセッションでは、心臓の形成における細胞増殖に関して(竹内隆氏、三菱化学生命科学研究所)、また原腸形成における細胞移動に関して(上野直人氏、国立基礎生物学研究所)講演が行われた。形態形成を取り上げた午後のセッションでは、昆虫の変態におけるステロイドレセプターの機能(James Truman氏、University of Washington、米)などについての講演があった。また、両生類の変態におけるリモデリングについてのDonald Brown氏(Carnegie Institute of Washington、米)の講演が、電話回線を通して行われた。
再生現象と形態のリモデリングについては3日目のセッションで取り上げられた。最初の講演は、四肢の再生における筋管の再構築と位置情報に関するものだった(Jeremy Brockes氏; University College London, 英)。続いて、再生中のサンショウウオの脊髄において背腹軸の決定に関与する外因性シグナルの解析についての講演があった(Elly Tanaka氏; Max-Planck Institute, 独)。また、脊椎動物の四肢の再生を研究するための解析手法の開発について、Susan Bryant氏(University of California Irvine、米)が報告した。最後のセッションではEvo-devoの観点からリモデリングについて議論が行われ、脊椎動物の四肢やひれのポジショニングに関与する進化的に保存されたメカニズムについての講演(田村宏治氏; 東北大学)、羽毛の発生の形態学的研究(Cheng-Ming Chuong氏; University of Southern California、米)についての講演があった。
第3回となる次回のCDBシンポジウムは、脊椎動物の起源と発生をテーマに、2005年4月11日〜13日の日程で開催される。
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