卵母細胞と受精卵の細胞分裂における染色体分配の機構とエラーの原因を明らかにする
卵母細胞は減数分裂を行うことで卵子となります。卵子は受精して細胞分裂を繰り返すことで、やがて個体となります。私たちの研究室では、マウス卵のハイスループットかつ高解像度ライブイメージング技術、顕微操作技術、遺伝学的手法を組み合わせることで、卵母細胞の減数分裂と受精卵の体細胞分裂における染色体分配を研究しています。卵母細胞が行う最初の分裂が減数第一分裂です。このときの染色体分配はエラーが多く、その頻度は母体年齢とともに上昇します。続いて受精時に減数第二分裂が、受精後にはDNA複製を経て体細胞分裂が行われ、それぞれで染色体が分配されます。私たちは、これら3回の連続した細胞分裂における、異なる染色体分配のロジックを明らかにしていきます。卵母細胞の減数第一分裂における染色体分配の機構を明らかにし、なぜこの分裂で特にエラーが多く、しかも年齢とともにその頻度が上昇するのかを理解します。続く減数第二分裂、体細胞分裂のそれぞれの機構と比較することで、細胞が染色体分配の戦略を柔軟に使い分ける様を見出していきます。これらの研究から得られた成果を、さらに生殖医療分野との共同研究に活かしていきます。
研究テーマ
1. 哺乳類卵母細胞の減数分裂における染色体分配機構の解析
2. 受精卵の細胞分裂における染色体分配機構の解析
3. 卵母細胞および受精卵における老化にともなうエラー
主要論文
Kyogoku H and Kitajima TS. Large cytoplasm is linked to the error-prone nature of oocytes. Dev Cell 41, 287-298 (2017). doi:10.1016/j.devcel.2017.04.009
Sakakibara Y, et al. Bivalent separation into univalents precedes age-related meiosis I errors in oocytes. Nat Commun 6, 7550 (2015). doi:10.1038/ncomms8550
Yoshida S, et al. Inherent instability of correct kinetochore-microtubule attachments during meiosis I in oocytes. Dev Cell 33(5), 589–602 (2015). doi:10.1016/j.devcel.2015.04.020
Kim J, et al. Meikin is a conserved regulator of meiosis-I-specific kinetochore function. Nature 517(7535), 466–471 (2015). doi:10.1038/nature14097
Solc P, et al. Multiple requirements of PLK1 during mouse oocyte maturation. PLoS ONE 10(2), e0116783 (2015). doi:10.1371/journal.pone.0116783
Kyogoku H, et al. Nucleolus precursor body (NPB): A distinct structure in mammalian oocytes and zygotes. Nucleus 5(6), 493–498 (2014). doi:10.4161/19491034.2014.990858
Kitajima TS, et al. Complete kinetochore tracking reveals error-prone homologous chromosome biorientation in mammalian oocytes. Cell 146, 568–581 (2011). doi:10.1016/j.cell.2011.07.031