期間中のレポート

2017年8月21日(月)から25日(金)までの5日間にわたり、「大学生のための生命科学研究インターンシップ」を実施しました。今回は124名の応募があり、選考の結果、11の研究室に合計30名の大学生の受け入れを行いました。

8月21日(月)初日

ふとした折に夏の終わりを感じるようになったとはいえまだまだ残暑厳しい中、全国から30名の参加者がCDBにやってきました。既に前日から宿泊所で顔を合わせていた参加者もいて、打ち解けた雰囲気が漂います。長いようで短い、短いようで長い、皆さんにはどんな5日間になるでしょうか。

オリエンテーション

まずは、教育プログラム担当代表の森下喜弘ユニットリーダーから歓迎のあいさつの後、当研究所の研究内容や連携大学院制度の概要、本プログラムの目的や注意事項について説明がありました。その後、安全管理講習会が行われ、実験時に必要な知識について学んでいる間に続々と受け入れラボのラボヘッドがやってきます。
参加者の自己紹介では、短い時間にもそれぞれの個性が垣間見え、見守るラボヘッドの間にもこれからの5日間への期待が高まります。また、ラボヘッドによるフランクなラボ紹介を聞いているうちに、参加者の皆さんにも笑みが広がっていき、会場は次第に和やかな雰囲気に包まれていきました。

配属研究室での実験開始

各研究室でラボメンバーから指導を受けて実験開始です。生物学、化学、工学、医学、薬学、情報学など、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者に充実した体験の場を提供できるように、各ラボはこの日まで時間をかけて綿密に準備してきました。


体軸動態研究チーム

フィジカルバイオロジー研究チーム
交流会

初日の夜には、CDBキャンパスのラボメンバーも参加して交流会が開催されました。このころにはすっかり緊張もほぐれた様子です。

 
8月22日(火)~24日(木)
講義

インターンシップ期間中に、森下喜弘ユニットリーダー、Li-Kun Phngチームリーダーによる2つの講義が行われました。いずれも最先端の研究内容だけでなく、自身の学生時代や研究歴などが参加者に身近な視点から語られました。
森下ユニットリーダーの熱意あふれる講義に引き込まれ、何人かの学生は文字どおり前のめりになって聴き入っていました。また、英語で行われたPhngチームリーダーの講義でも積極的に英語で質問する参加者たちの姿が見られ、既に世界に目を向けている皆さんの様子がうかがえました。



各研究室で

ラボには新しい体験がいっぱいです。その余韻に浸る時間をも惜しんで、参加者は積極的に研究に取り組みました。


染色体分配研究チーム

ヒト器官形成研究チーム

形態形成シグナル研究チーム

呼吸器形成研究チーム
オープンラボ

オープンラボでは自分が所属する研究室以外に4つの研究室を訪問することができます。日も暮れ、薄暗くなった廊下を恐る恐る歩いていった先に新たな知見への扉が開いていました。


再構成生物学研究ユニット

発生エピジェネティクス研究チーム

細胞外環境研究チーム

Yoo生理遺伝学研究室

上皮形態形成研究チーム

体軸動態研究チーム
8月26日(金)最終日
研究発表会

いよいよ研究発表会の日を迎えました。多細胞システム形成研究センターの濱田博司センター長からのあいさつの後、森下ユニットリーダーから進行上の注意事項について説明がありました。参加者の皆さんは発表のみならず、司会やタイムキーパーなどの進行も担当することで、自分たちの研究発表会を作り上げていきます。

今回の研究発表会では、3つの「PI選考賞」と1つの「学生投票賞」を設けました。厳正なる審査の結果、「PI選考賞」は「上皮形態形成研究チーム」「形態形成シグナル研究チーム」「体軸動態研究チーム」へ、参加者が選んだ「学生投票賞」は「再構成生物学研究ユニット」へ贈られました。


上皮形態形成研究チーム

形態形成シグナル研究チーム

体軸動態研究チーム

 再構成生物学研究ユニット
 

最後に、森下ユニットリーダーから講評が述べられました。全てのチームが全力を出し切ったことはもちろん、今回は例年以上に参加者から活発な質問が相次いだこと、そしてそれらから逃げることなく対応した各チームの真摯な態度に賛辞が贈られ、今年のインターンシップは幕を閉じました。
参加いただいた皆さん、本当におつかれさまでした。


みんなで記念撮影
 

インターンシップ生の感想文

 
神戸大学医学部医学科 2年 倉橋悠里子
『最先端に触れた夏』

理研でのインターンに参加した今年の夏はとても濃いものになりました。私は昨年まで理学研究科の修士課程で研究をしていたのですが、今年春より医学部に学士編入学しました。研究から離れて数ヶ月、また研究をやりたいという気持ちが強くなったことが応募理由です。インターンでは朝から晩まで研究を行い、ヒトiPS細胞から作製した腎臓オルガノイドの培養、real time PCR、蛍光顕微鏡での観察など様々な実験を行いました。
私が配属されたヒト器官形成研究チームは、学生を受け入れるのが今年初めてだったのですが、どうしたら私たちが短い間で多くのことを吸収し、研究の面白さや難しさを感じることができるのか深く考えてくださり、プレゼンの作成の際には夜中まで残って親身に助言してくださいました。
また、夜に開かれるオープンラボツアーも楽しかったです。興味のあるラボを幾つか訪問し、PIの先生方のお話を聞くことができる機会は他にはありません。またチームごとに部屋の雰囲気やカラーがまったく違うため、 訪問をする際も楽しかったです。夜遅くにホテルで友達と話したこと、全国から集まった研究熱心な学生と五日間を共に過ごせたことはよい思い出です。
そして理研では「研究室」ではなく「チーム」とよばれていることが印象的でした。それぞれのメンバーがチームメイトとして同じ方向に向かって研究を進める姿勢は、まさに「チーム」という言葉がぴったりだと感じました。またどのチームもオープンで、パーティの場で情報交換するなど、理研は国際的で自由な雰囲気でした。親身になってくださり、最終日のプレゼンでは僕の方が緊張したと笑っておっしゃっていた高里先生、夜遅くまで残りアドバイスをくださった佐原さん、ヒト器官形成研究チームの皆様、本当にありがとうございました。またこのような素晴らしい環境で研究をさせてくださった、運営の方々、重ねてお礼申し上げます。

 
東京女子医科大学医学部 2年 栗山 和可子
『これからに繫がる5日間』

私は基礎研究に興味があるものの、在籍大学が単科医科大学のため基礎研究の触れる機会が少なく、分野も限られているのが悩みでした。そのため、基礎研究にどっぷり浸れ、大学とは異なる分野・規模の最先端の研究を見たいと思い、今回のインターンシップに応募致しました。
所属した呼吸器形成研究チームでは、マウス胎児から取り出した気管の上皮細胞の分化・増殖について実験しました。5日間の短期間でしたが研究をする中で、思いもよらなかったデータが出た理由やデータを評価するのに適した基準を考えたり、普段から使用している「増殖」の定義について根本から考え直したりして、実験中に生じた様々な疑問にじっくりと向き合い悩むことが出来ました。
また、インターン中にPIの方々をはじめ様々な方から研究職、研究とは、留学、ライフプランや理研など、ここCDBでしか聞けないお話を伺うことができ、これが私にとって一番の収穫となりました。なぜなら、お話の中に自分の将来に関わる重要なアドバイスが多々あり、それに刺激されて、自分が将来何をしたいのか、それを成し遂げるにはどうすればいいのか等、インターンシップ前はかなり漠然としていた将来像が具体化・明確化され、実現するための計画を立てようと真剣に考えるようになりました。私が立てた将来設計を実現するにはいくつもの高い壁が待ち受けていると思います。ですが、数年後、数十年後に人生の分岐点で、自分の道に悩み決める際に、インターンシップを通じて得られた出会いやアドバイスなどを思い返し、自分の夢を後押しし達成するための原動力となるとなる気が大いにします。このようにインターンシップ後に具体化した将来について真剣に考えているとは、インターンシップ前には思いもよらいない幸運でした。
最後にこの場をお借りして森本先生、熱心にご指導頂いた清川さん、呼吸器形成研究チームの皆さんに感謝の意を表したいと思います。また、理化学研究所の方々をはじめインターンシップに参加するにあたりお世話になった方々のおかげで、このようなかけがえのない将来に繫がる機会を得ることが出来ました。本当にありがとうございました。

 
京都産業大学 総合生命科学部生命システム学科 3年 中原 舞
『濃い5日間』

理研のインターンシップに応募したきっかけは、以前から気になっていた研究職について知りたかったのと、自分が触れていることとは違う観点で生命現象を見てみたいと思っていたからです。参加させてもらえることが決定した時は、周りの人のレベルについていけるかとても不安になりましたが、ラボではとても丁寧な指導をして頂き、たくさんの発見をすることが出来ました。
私がお世話になった藤原先生の細胞外環境研究チームでは、細胞の運命はどこで決定するかという課題を頂きました。学生実験とは違い、答えのわからない疑問を5日間で結果を出し、まとめて、プレゼンテーションすることはとても難しかったです。ですが、同じチームの人とたくさんディスカッションをし、時にはラボの方にアドバイスをもらいながら自分たちで解決していく楽しさは、濃縮された5日間でしか味わえないと思います。また、今回得られた結果が去年のインターンの方の結果と少し違うところがあったのですが、”自分たちで得た結果を信用する”という、研究を進めていく中で大切なことも学ばせてもらいました。
また、オープンラボツアーではどのラボも面白そうな研究や興味深い内容がたくさん転がっていました。本当にやりたい分野は何なのか迷っていた私にとって大変為になる機会でした。
さらにこのインターンでは様々な学校や学部の人が集まるので、いろんな話が出来たり、考え方が似たような人とも交流でき、普段では味わえない刺激を感じました。そんな同年代の人たちと仲良くなれることは大きな財産だと思います。
この5日間は私にとって本当に充実したものになり、今後の将来について深く考えるきっかけにもなりました。最後になりましたが、このような貴重な体験をさせていただきました、細胞外環境研究チームの皆さん、他のラボや事務局の皆さん、共に切磋琢磨し合えたインターン生の皆さんに心より感謝いたします。

 
早稲田大学 先進理工学部 化学・生命化学科 3年 永渕 寛子
『インターンシップに参加して』

本インターンシップに参加した主な理由は二つありました。一つは高度な研究を体験したかったから、もう一つは実験や研究者・学生との交流を通して今後の進路について考えたかったからです。配属された上皮形態形成研究チームでは、チームの皆様に大変お世話になり、期待以上に充実した5日間を過ごすことができました。
私が取り組んだ課題は、ショウジョウバエ胚の形態形成の過程で一過的に形成する組織構造、cephalic furrowの行方を追うと言うものでした。主な方法は、蛍光標識した胚試料の24時間程度のライブイメージングと、Imaris 7 というソフトウェアを使った画像の立体化でした。たった5日間の実験にもかかわらず、未熟ながらも新しい発見があったことは大きな驚きでした。理研では最先端の研究が行われているということが実感出来ました。一方、ウェットな実験より、プログラミングやソフトウェアを使った画像の処理や立体化などに時間を費やしたことは予想外でした。複数の分野の知識を駆使して研究を行っていることがわかりました。
最終日の発表では、直前までWang先生に丁寧にご指導いただきました。科学研究の発表で使う表現やスライドの構成などを学ぶことが出来ました。他のグループの発表は、どれも興味深かったのですが、質問するなど、積極的に参加すれば良かったと思いました。発表の前夜は、他のグループ同様に、私も研究のデータをまとめたり発表の仕方を工夫したりするなどして、遅くまで作業をしました。終わった時の安堵感、充実感は、忘れられません。
懇親会やオープンラボで、先生やポスドクの方とお話しする機会も多くあり、研究の魅力や研究所での生活の様子など、参考になるお話が多く聞けました。また、共に参加した学生からは、良い刺激を受けました。
このような機会を準備して頂いた上皮形態形成研究チームの皆さん、他研究チームの皆さん、職員の方々に感謝申し上げます。

 
神戸大学 医学部保健学科 3年 西田 有希
『人生最高密度の5日間』

今の自分の学部(看護)に残るべきか、本格的な理系の実験・研究をできる他学部を目指すべきか。私が理研のインターンシップを知ったのは進路に悩んでいた時でした。理化学研究所という最先端の研究機関での研究体験を通じ、何かヒントを得られればと参加しました。
配属先は発生エピジェネティクス研究チーム。X染色体の不活性化の研究を行うことになりました。門外漢の私でしたが、やさしくご指導いただいたおかげで一番心配だった実験データ収集は無事終了。
「定説にとらわれることなく、フレッシュな目でデータを見、なるべく自分たちの力で研究を進めてほしい」というラボの方針。ほぼ知識なしのインターン生3人で目を皿のようにして画像データを見、疑問解決のヒントはないかと特徴を拾い上げ、議論し続ける毎日でした。そうしてじっくり先入観なくデータと向き合ううち、私たちはこれまでの定説と異なる現象が起こっていることに気付きます。あの時の発見の嬉しさは多分一生忘れません。
これから自分が研究したい分野が既存知識の多い分野だとは限りません。そういう時、今回の研究のように一つ一つのデータと真摯に向き合い、固定観念を排して考え続け、気付いたことを議論し発表する力は地味でありながら研究者として非常に重要なものであり、それを学べたことは本当に大きな財産です。
また、実感したのが素晴らしいメンバーに恵まれることの有難さ。私のラボでは研究に向き合う真剣さと和気藹々とした雰囲気が両立し、常に前向きに研究に取り組める環境でした。短い日程の中、私たちが充実した時間を過ごせるように環境を整えて下さり、最終日まで本当に良い体験をさせて頂きました。インターン生のお二人を含め、このような素晴らしいメンバーと過ごせたことは、私の一生の宝です。
参加前は、研究の世界で本当にやっていけるだろうかととても心もとなく思っていました。しかし、素晴らしい仲間に囲まれて研究を行う楽しさを知った今、本気で研究者を目指そうと覚悟を決めました。今回のインターンがなければ、研究がこんなにやりがいのあるものだと気付けませんでした。
間違いなく人生最高密度の、有意義な5日間でした。親身にご指導下さり、何から何まで良くして下さったチームリーダーの平谷先生や高橋さんをはじめとする発生エピジェネティクス研究チームの皆様、たくさんの刺激を下さったインターン生の皆様、インターンシップ運営に関わってくださいましたすべての方々に、深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 
大阪大学 理学部物理学科 3年 福島 啓太
『非常に濃かった5日間』

僕にとってこのインターンは強烈な刺激にあふれたものでした。
僕は物理学科です。生物と関わりのあまりなかった分野からの参加は、とても心細いものでした。そこで、1番物理に近いフィジカルバイオロジー研究チームに配属させていただくことにしました。
まず刺激を受けたのは、同じ研究室に配属されたインターンシップ生の2人からです。2人とも生物分野は初心者で、安堵感を僕に与えてくれるとともに、キャラや得意分野もバラバラでたくさんの影響を与えてくれました。この2人とは五日間絶妙なチームワークを発揮し、楽しくとことん取り組むことが出来ました。
また、柴田先生をはじめフィジカルバイオロジー研究チームの皆さんからも非常によくしていただきとても楽しかったです。特に五日間夜遅くまで面倒を見てくださった山本さんは、実験や研究職についての話から、研修生の個人的な進路や恋愛相談まで全ての面でかまっていただき、急にとても頼りになる兄貴ができた気分でした。また、最終日のプレゼンテーションでは、一緒に発表した研修生同士が自然に助け合ったり、見に来ていただいた柴田研の木下さんを、他のインターンシップ生に僕のお母さんと勘違いされるなど、インターンが始まるまでは想像もできなかったような親密な人間関係が得られました。
またオープンラボでもたくさんの刺激を受けました。知らないことも多く、ついてくのが大変でしたが、分かりやすく生物の面白い話や世界レベルでもまだ分かっていないことなども教えていただけ、本当にオープンラボを開いてもらえてよかったです。
そして他の班の人からの刺激です。インターン参加者全員との交流会が初日と最終日にありましたが、参加者皆バックグラウンドが違って誰と話しても楽しかったです。バックグラウンドは違いましたが、将来は研究職につきたい、生物のこのような研究をしたくて応募したという人が多く、僕はまだ自分の進路がはっきりとしていなかったので、とても刺激を受けました。
物理学科から他の専門分野を知って刺激を受けたいと思って来たが、期待していた以上の刺激、衝撃を受けて、この夏の大きなイベントではなく、人生を通した大きなイベントとなったように感じました。
柴田研究室の皆様、インターンの機会を設けてくださったスタッフの方々本当にありがとうございました。

感想文をご提供くださった皆様、ありがとうございました。