CDBとは

情報公開 Publicinformation

CDBの情報公開についてご紹介します。

アドバイザリー・カウンシルからの提言

発生・再生科学総合研究センター アドバイザリー・カウンシル2014(平成26年2月24日~2月27日実施)

本報告書は、基本的に2014年2月末の会議開催直後に作成したものである。
その後、状況が変化したことにより現状と一致しない部分がありうる。
なお、8月までに一部文章を追記している。

アドバイザリー・カウンシル報告書(仮訳)
<会議プログラム>

2014年2月24~27日、神戸において、理化学研究所(以下「理研」という。)発生・再生科学総合研究センター(以下「CDB」という。)アドバイザリー・カウンシル(以下「AC」という。)が開催され、前回以降の進展と活動状況に対する評価が行われた。会議はCDBセンター長である竹市博士のプレゼンテーションで幕を開け、前回のAC以降の新任チームリーダー(以下「TL」という。)や着任間近の新グループディレクター(以下「GD」という。)の採用、CDBの科学・予算面の進展について概要説明があった。ACは、CDBが事前に準備し配付した2014白書により、さらなる情報を得た。竹市博士は前回会議のAC提言への対応策についても説明を行った。彼は、理事長から各センターACへの諮問事項、つまり研究センターの国際的な位置づけに関する評価と、飛躍的進歩のための方策の提案という2つの項目に触れてプレゼンテーションを締めくくった。続いて、理研の理事である川合博士から、小保方氏らがネイチャー誌に発表したSTAP論文中のデータと図に関する疑義について、現在理研が行っている調査の概要説明があった。笹井博士は、ACメンバーに対して、技術的な詳細の補足説明を行った。

2日目は、主にGDとプロジェクトリーダー(以下「PL」という。)の評価を行った。会議に先立ち、プログレスレポートと将来計画に関する資料が、外部レビュアの評価結果とともに配付された。研究者たちはそれぞれ研究概要を説明し、ACの質問に答えた。午後遅く、ビュッフェ前に行われたポスターセッションの間、ACメンバーは博士課程の学生や若手研究者と会い、議論する機会を得た。

翌日は、最近着任した9名のTLと2名の支援系研究室の長がそれぞれの研究内容を説明し、ACの質問に答えた。午後、ACは3グループに分かれ、研究室訪問や、他のTLの研究内容のヒアリングを行った。TLは、研究活動すべてではなく、むしろ最も興味深い進捗に絞って説明するよう指導を受けていた。ACは、在籍期限の10年前後が経過し、転出準備中の数名のTLと将来の方向性について議論した。この日はGDやPLとの夕食をもって終了した。

最終日の午前、ACは委員だけの非公開討議を行い、報告すべき事項と提言の案をまとめた。ACは、STAP問題について竹市センター長とさらに議論し、笹井博士と補足的な打ち合わせを行った。

川合理事がテレビ会議で出席する中、議長はアドバイザリー・カウンシルの報告事項とCDBの研究室主宰者(以下「PI」という。)へのアドバイスを述べた。会議の後、ACはGD及びPLの評価結果とTLに関するコメントをセンター長に送付した。そして、2014年8月に、完成した報告書を理研に送付した。

<総合評価>

CDBは、発生学分野における世界有数の優れた研究機関として認知されている。CDBの研究者の多くは、各研究分野において世界の最先端で活躍している。このことは、CDBが2012年に164報の論文を発表し、その1/3はNature、Science、Cellなど、世界をリードする学術誌に掲載されたという実績にも表れている。質の高い研究成果の創出と符合して、CDBの研究者たちは外部競争的資金の獲得にも成功しており、2012年、2013年ともに、11億円以上/年を獲得している。

CDBは、分子進化学から再生医学まで、現代の発生生物学研究を幅広い領域にわたって実施している。重大課題に取り組む壮大なプロジェクトには、しばしば革新的で分野横断的なアプローチが必要であり、それは、いまやCDBの特質を表すものとなってきている。CDBでは、シニア、中堅、若手の研究者がバランスよく配置されている。多くの若手研究者が優れた才能を持っていると認知されている一方で、シニア研究者も各々の分野で世界的権威として活躍している。実際、CDBは、開かれた雇用制度やTLの転出入によって、優秀な若手研究者の雇用機会を生み出していることについて、高い評価を得ている。

CDBは国際的な発生生物学コミュニティに深く関わっており、毎年成功を収めているCDB国際シンポジウムの開催、様々な研究所との研究交流の促進、ジョイントミーティング、そして外部講演者による充実したセミナーの開催などを行っている。とりわけ、動物資源開発室が、日本や他の多くの国々の研究者に向け遺伝子改変マウスの作製を果たしている点は重大で、高く評価されている。さらにCDBは、科学に関する情報を幅広く世間に発信している。総合的に見て、CDBは、理研及び日本の科学の世界的な知名度と信用性に大いに貢献している。

いまやCDBは、世界を代表する研究機関としての地位を築いている。更なる飛躍的進歩を遂げるには、国際的な博士養成機関としても認められることが重要であろう。大学との連携のもと、有能な若手研究者を日本へ惹きつけるような競争力のある国際的な博士課程プログラムを確立することは、CDBや理研にとって絶好のチャンスになるであろうとACは考える。たとえばEMBL(欧州分子生物学研究所)のように、一流の博士課程プログラムを備えていることは、世界的に優れた研究機関の特徴である。優秀な博士課程の学生の活力は、CDBに良い効果をもたらすであろう。

CDBの成功の秘訣は、世界的に尊敬され評価の高い研究者である竹市博士がその設立当初から統括していることにある。近々、同じように広い視野を持つ卓越した科学者が任命され、竹市博士が築いた基盤を引き継いで、最先端の発生生物学や幹細胞研究を行う研究所を維持していかなければならない。しかし、竹市博士の後任にふさわしい研究者を探すことは極めて困難である。さらに、有能かつ著名な副センター長であった西川博士と相澤博士は2013年に引退している。このような状況を考えると、暫くの間、CDBの管理や運営の面で竹市博士を支えていくことが必須である。

<GD及びPLの評価>

ACは、前回提言したとおりにリソースが有効に再配分されていることを確認し満足した。全GDは、外部レビュアによって各分野の先駆的研究者であると高い評価を得た。また全員が、評価対象期間中に、新たな成果や特記すべき論文を発表していた。よって、ACは、全GDの契約更新を支持した。ACは、丹羽博士をPLとして契約更新することについて肯定的な意見で一致し、また、高橋博士(中間評価)のトランスレーショナル・リサーチの活動状況やその進展についても感銘を受けた。最後に、ACは、適切な指導をつけた上で柴田博士をPLに昇進させる案に賛成した。

以下は、2014年3月にACがまとめた提言とアドバイスであるが、その後の状況により一部のコメントを修正しており、また、報告書を完成するにあたり、補足資料として、2014年6月以降のACメンバー間での最近のやりとりや、2回に亘って行われたインターネット会議の結果を記載している。

 

STAP問題
ACは、CDBセンター長が理研による調査を後押しし、適切に問題に対処していると考える。また、論文の訂正をネイチャー誌に依頼していることや、今後、より詳細な実験手技解説が公開予定であることをACは評価する。これらの動きが、CDBや個々の執筆者が受けるダメージを軽減するであろう。CDBが、科学データの発表に関し、深刻に受け止めていないという印象を与えないよう強調したい。また、ACは以下を提言する。

  • CDBセンター長は、原論文へのデータの掲載や監督の際に研究者としての過失があったことを認め、理研と共に公式声明を発表すること。
  • 論文の共著者、特にCDBのシニアな著者は、CDB内外でのコミュニケーションの際には、これらの過失に対して誠実に対応し、「悪意のない間違い」などの表現を避けること。
  • 研究倫理やデータ発表に関するセミナーを、CDB内の全ての研究系職員や学生に参加を義務づけた上で実施すべきである。研究倫理の専門家は理研所内および大学で講演する機会を与えた方が良い。将来、このようなセミナーを、少なくとも1年に1回、理研に新しく入った職員及び学生全員に対して実施すること。

ACミーティング終了時、CDBが近々リプログラミング技術についての公開シンポジウムを開催する予定であることをACメンバーは知った。これは、素晴らしい企画である。

 

GDの採用について
相澤博士と西川博士が引退し、新センター長が未だ任命されていない状況の中で、新GDを採用し、CDBの幅広い分野におけるリーダーシップや知名度を強化することが重要である。シニア研究者を入れ替えていくことで、CDBが閉鎖的でないことを示せるであろう。このことから、CDBが、2014年内に、竹市センター長の下、新GDを世界中から探すことを提言する。

科学的な質を維持することは最優先するべき事項である。以前のACミーティングでも強調してきた通り、若手研究者の指導に対し強い使命感を持った世界的に著名な外国人を採用すれば、CDBに多くの利益をもたらすであろう。研究分野を厳密に限定する必要はないが、哺乳類の発生分野の研究者を採用するのが最適であろうとACは考えている。ネイチャー誌やその他の学術誌への広告掲載に加えて、一流の研究機関の代表者に採用情報を周知していくことが有効であろう。さらに、新GDの候補者リスト作成のためCDBサーチ委員会を招集し、候補者に直接コンタクトを取った方がよいであろう。ACメンバーは、この件について検討し、候補者選出に協力していきたいと考えている。

ACは、丹羽博士が望むなら、彼は有力なGD候補者になると考えている。彼は、国際的に高く評価されており、CDBの若手PIの指導者としての役割も担っている貴重な研究者である。しかし、彼にはPLとしての任期があと5年あることから、現時点ではGDに任命するよりも、他の形、例えばより多くの資金を充当するなどして、彼の素晴らしい功績を認めていくことが適切であろう。現在の特別な状況を考慮し、別の手段として、丹羽博士と外部候補者の両者を確保するために、新GD枠を設置することもできるであろう。

 

再生医療とトランスレーショナル・リサーチ
CDBのミッションは、創造的な基礎研究から先駆的な医療応用の分野にまで及ぶ。高橋博士の業績は、基礎科学から再生医療への架け橋を築いた模範的な事例となるものである。しかし、彼女のチームは、CDBでは稀なケースである。ACは、再生医療開発推進プログラムへの更なるプロジェクトの創設がCDBにとって不可欠であることを提言する。

CDBにとって、革新的研究と自由な発想に基づく卓越した基礎研究を維持することが何より重要である。とはいえ、トランスレーショナル・リサーチに従事する研究者との堅実な連携体制を築くよう留意する必要がある。これは容易なことではなく、世界中の研究機関がこの問題に苦労している。しかし、世界のトップレベルの基礎科学、十分な資金、臨床研究施設との近さ、これら全てを兼ね備えているCDBは、恵まれた環境下にあると言える。

より幅広いトランスレーショナル・リサーチプログラムを発展させていく上で、組織工学の研究者の任命はCDBに多くのメリットをもたらすとACは認識している。我々は、辻博士の研究を知り、今後のAC会議において、彼の研究とCDBへの融合の状況を聞けることを楽しみにしている。特に、発生生物学者や幹細胞生物学者との有意義な交流によって、組織工学分野の成果を最大限に生かすことを期待している。

CDBは、優れた基礎研究を応用することによって、最高の質をもつトランスレーショナル・リサーチをより一層推進していく方策を考えるべきであるとACは提言する。CDBの全ての研究室がトランスレーショナル・リサーチに関する目標を掲げる必要はないが、前臨床研究を含む臨床研究と連携し、関与する機会を育むべきである。可能な方策としては、呼び水となるトランスレーショナル・プロジェクトの内部資金の確保、MITのLanger研究室のような一流の国際センターとの研究交流、さらに臨床専門研究者のためのインターンシップなどが考えられる。最後の方策として、医療分野における基礎研究の発展促進に重点を置き、医師免許や歯科医師免許を取得した新規卒業生を積極的に採用している理研の大学院生リサーチ・アソシエイト(JRA)制度の活用が有効であろう。

 

博士課程プログラム
一流の研究者である相澤博士と西川博士が引退したことが一因ではあるが、博士課程の学生が減少し続けていることにACは懸念を抱いた。また、ACは、現代の日本の若者は、博士課程における研究に対する興味が薄れていると伺っている。前回ACの報告書で強調したように、次世代の研究者を育成することは、CDBのような国際的な研究機関の重要なミッションである。さらに、大学院生は研究室の独創性を高め、活性化する上で貴重な存在である。海外から来た質の高い学生を惹きつける条件は整っている。また、ACは理研の国際プログラム・アソシエイト(IPA)制度に興味を抱いた。CDBセンター長が博士課程学生の増員のために尽力していることや、現在CDBの大学院生の20%が外国人であることも前向きにとらえた。CDBが、優秀な博士課程学生を誘致するにあたって理研のJRAやIPAの制度を最大限に活用すること、加えて、博士課程学生を支援するため所内ファンドをより活用していくことをACは提言する。博士課程学生の育成に関わる心構えも、TLやGDの採用時に確認すべきである。

CDBは、発生生物学と細胞再生分野において、アジアのみならず世界中の学生にとって魅力的な、世界トップレベルの博士課程プログラムを問題なく実施できるとACは考える。EMBLやウエルカム・トラスト、他のいくつかの研究機関は、非常に優れた国際博士課程プログラムを実施している。企画や調整には非常に手間がかかることから、CDBが国際的博士課程プログラムのために、運営、募集、コースの企画、メンタリング制度の役割を担う大学院研究担当職員を選任することをACは提言する。この担当者が、海外の研究機関との連携を担うリエゾン担当者の役目を担ってもよい。

 

TLの転出入
ACメンバーは、CDBのTLが日本の大学への転職に成功していることに非常に満足している。ACは、この新しい転出入制度を確立することは、CDBや本人にとって大変困難な道のりだったであろうと推察する。しかし、この転出入制度は、ポストが空くことで将来有望な新しい研究者たちを受け入れる機会を創出し、CDBを刷新する効果を生み出してきた。より長期的に見れば、日本の大学は、CDBで育った質の高い研究リーダーを雇用することによって得られる利益を実感するようになるであろう。結果として、CDBのTLは、より大学に異動しやすくなり、CDBと大学との関係はますます良好になるであろう。。

 

若手研究者コミュニティ
ACメンバーは、学生や若手研究者によるポスター発表の質の高さに感銘を受けた。ACは、活気ある若手研究者コミュニティが研究所の原動力になることを強調しておきたい。CDBが若手研究者のために最良の環境を提供できるよう努めることを、ACは提言する。その方策として、GDによる指導や、自主的な若手研究者の会の発足を促すことが挙げられる。若手研究者の会が科学的・社会的なイベントの企画や、セミナーの講演者の招聘、毎年行われるリトリートの企画などの役割を担うこともできるであろう。講演者を招き、若手研究者たちがキャリア形成について議論することも推奨する。

 

シーケンシングインフォマティクス
工樂博士が、バイオインフォマティクスを含むゲノミクスの支援を効果的かつ合理的に行っていることは、称賛に値する。ディープシーケンスのためのコアインフォマティクス支援をどのように、どの程度のレベルで提供するかは、通常、困難な課題である。しかし、成果発表時におけるデータ解析の質を保つこと、そして効果的なデータの受け渡しや、共同研究を実施する基盤を一定して提供することは非常に重要である。比較的大型の研究室の場合は、専用のバイオインフォマティクス担当者を雇えるかもしれないが、すべての研究室に配置することは難しいであろう。CDBにおけるシーケンシングインフォマティクスの需要と供給の量を再調査することをACは推奨する。

 

プレゼンテーションスキル
GDやTLの口頭発表と質疑応答には明らかにばらつきがあり、一般的に北米やヨーロッパの研究機関で期待されるレベルに達していない。ほとんどのPIはある程度の英語を話したが、内容の組み立て方、タイミング、形式、議論中の応対が不十分なケースがあった。これは重要な問題である。なぜなら、講演者として招待されるには、明確に発表し、主張する能力が求められるからである。CDBが全PIと若手研究者を対象に、専門家によるプレゼンテーションスキル研修を実施することをACは提言する。

 

支援系研究室
支援系の研究室は、基盤となるコアファシリティを効率的かつ高水準で提供している。それらは、CDBにとって大切な資産である。一部のユニットリーダーにとっては、ある程度の時間を自分の研究に充てられることでやる気が高まっているとACは感じている。しかし、このような研究活動を確実に評価し、コアファシリティの提供の妨げにならないようにすることが重要である。

 

GDのレポート形式
外部レビュアの複数名が、一部のGDの報告書の内容では将来の研究計画を評価することは困難とコメントした。ACはこの意見に同調するとともに、更にGDの口頭発表においても将来計画があまり示されていないことに気付いた。ACは、今後GDの評価レポートを決められたフォーマットに従って作成するよう推奨する。背景0.5ページ、評価対象期間における進捗2.5ページ、将来計画3ページ、続いて論文発表、主な招待講演、研究資金の詳細、過去及び現在の研究室員、そしてCDBにおける役割、という構成が考えられる。

 

ACメンバーの交代
ACの全メンバーがCDBと密接にかかわっていると感じており、ACの役割を担うことを光栄に思っている。それでも、ACは、次の会議に向けてメンバーを入れかえるよう推奨する。

 

終わりに
GDの研究発表は、大変質の高いものであった。しかし、ACは、前回会議に比べると盛り上がりや熱意がやや低下しているように感じた。現在の特殊な状況が一因かもしれないが、明らかに疲弊した雰囲気は、新GDの任命を機にCDBの合議による指導体制を見直し、再活性化させる時期にきている兆候であるとACは考える。

<アドバイザリー・カウンシル報告書への補足―2014年8月>

「研究不正再発防止のための改革委員会」からの思い切った提言は、科学コミュニティに大きな不安を呼び起こした。世界中の多くの研究者や研究機関からACメンバーに、CDBと竹市博士をサポートする手紙を書きたいと連絡があった。これらの状況を受け、ACは6月中旬に議論を行い、以下の見解をまとめた。

  • 理研は、STAP問題に直接関与していないCDBのチームにより実施された過去及び現在の研究に問題がないことを、自信を持って明確に述べるべきである。この状況において罪のないCDBの研究者に厳しくあたるべきでも、別の研究所への異動を強要するべきでもない。彼らのように世界的に名の知れた科学者が日本を出て海外の研究室に移ってしまうことは非常に危険である。この頭脳流出は日本の科学界にとって大きな損失となるであろう。
  • CDBは解体されるべきではないが、新たな首脳陣のもと、改組されるべきである。理研はそのプロセスを監督すべきだが、外部からの再編計画を無理強いしたり、他の研究所と合併したりすることは、あまり好ましくないであろう。
  • CDBの科学的なミッションの核となる発生生物学や幹細胞生物学の研究は残すべきである。高橋博士の研究で実証されているとおり、CDBの先駆的研究は、CiRAや他の研究機関と協調しながら、再生医療への応用を支えることが可能である。
  • 理研は、研究不正に関する研修とモニタリングを見直し、理研の全研究センターに対して公式のガイドラインを徹底するべきである。
  • 理研は、全研究センターにおいて、採用、メンタリングや個々の研究者の評価を、規則に基づき行うための正式な手順を持っておくべきである。
  • ACは、国際的地位のある新センター長の選考が今後速やかに行われるよう強く提言する。

6月の議論の後、ACは、2度に亘るインターネット会議などにより議論を継続した。ACの一致した意見は下記のとおりである。

  • 直近の状況を考えると、質が高く、ビジョンがあり、熱意のある新センター長を獲得することは難しい。まずは、CDBの幅広い科学面のミッションについて、日本の科学コミュニティや文部科学省と合意を得ることが重要である。新センター長の選考と採用のプロセスは、オープンかつ透明性を担保したものでなければならない。
  • 現時点では、CDBの再構築のための委員会を設置することが最も重要である。この委員会は下記の機能を持つべきである。
    ・基礎研究と応用研究のバランスや、細胞生物学の包含など発生生物学を超えて研究分野を広げるべきか否かをよく考慮した上で、CDBの将来のミッションを定める
    ・CiRA、神戸市、理研の他センター、国内の大学との連携や協力の機会を見直す
    ・CDBの暫定的な改組を総括する
    ・新センター長の候補者を選び、推薦する
    ・必要に応じ着任するセンター長をサポートする
  • ACの日本人メンバーの一人がCDBの運営会議に参加し、新しい視点でアドバイスを行うとともに、上記の委員会との良好なやりとりを行い協力関係を構築する。このメンバーは科学面での再編成及び上記委員会との調整を特命事項とするため、共同センター長の肩書を与えるのも良いだろう。
  • 新センター長はSTAP問題の疑惑があるまま採用されるべきではない。調査を締めくくり、明らかになったことや結果を公表するべきである。

ACは、政治的・経済的な制約を満たすため、ただちに何等かの措置を取らないといけないことは理解している。しかし、新センター長がCDBの方向転換と再生を主導するためには、全権限を付与されることが必要不可欠である。従って、われわれは理研に対し、研究プログラムや組織運営に柔軟性を保つよう要請する。。

 

終わりに
ACメンバーは、CDBのこの困難な時期を全力で支援している。発生生物学は再生医学の中核であることから、CDBは極めて重要なセンターである。CDBで実施している広範で革新的な研究は、比類のない重要な貢献を果たしている。アドバイザリー・カウンシルは、CDBは必ず再起すると確信している。

Austin Smith
ケンブリッジ
2014年8月26日

<アドバイザリー・カウンシル委員>

ケンブリッジ大学 Austin Smith教授(議長)
パリ、パスツール研究所 Margaret Buckingham教授
東京、慶應大学 須田年生教授
シンシナティ小児病院 Chris Wylie教授
シンガポール、分子・細胞生物学研究所 Stephen Cohen教授
大阪大学 濱田博司教授
エール大学 Haifan Lin教授
シドニー大学 Patrick Tam教授
京都大学 影山龍一郎教授

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